B. 極低温と超電導の世界を操る
〜超電導線への大電流通電〜

 皆さんは、電気抵抗がゼロになる超電導という現象を知っていますか? ある種の合金や セラミックをどんどん冷やしていくと、ある温度で電気抵抗がゼロになります。どれくらい 冷やす必要があるかは物質によりますが、NbTiという合金では-260℃くらいまで冷やす必要が あります。この電気抵抗がゼロになる現象を送電に利用すると、電気を送るときのロスが なくなって、エネルギーの節約になります。
 超電導は1911年に水銀でその現象が発見されて以来、急速に材料開発、技術開発が進み、既 に実用化されている超電導磁気共鳴診断装置(MRI)をはじめとして、電力分野などの様々な 分野への応用が進みつつあります。また、液体窒素温度-196℃でも超電導現象が発現する材料の 応用も研究が進められています。

 超電導現象の発現には極低温環境が必要です。この実験では、液体ヘリウム温度-269℃および 液体窒素温度-196℃の極低温環境を操り、超電導の世界を体験します。さらに、直径1 mm以下の 超電導線で作った小型超電導変圧器にどれだけ電流を流せるか、また、超電導現象がやぶれる 瞬間に何が起こるかを測定・観測します。

超電導体の電気抵抗はゼロ

 通常の金属には必ず電気抵抗が存在します。電気をよく通す銅でも、直径 1 mm、長さ100 mの 線で約1 Ωの電気抵抗を持ちます。通常の金属に大きな電流を流そうとすると、その電気抵抗 のため、だんだんと熱を生じます。一方、超電導体は図1に示したように、ある温度 (Tc)以下に冷やすと、電気抵抗が本質的にゼロになってしまいます。 そのため、電流を流しても熱が生じず、電力損失を小さくすることができます。



金属超電導線を使った小型変圧器

 変圧器は交流電圧を変換する電力機器です。図2のように鉄心に巻かれたコイルに電圧を かけると大きな磁束が発生します。この磁束が巻数の異なる別のコイルの中を通ると、 電磁誘導によって電圧が発生します。これにより、変圧器では2種類のコイルの巻数比に応じて 電圧を変換することができます。TEFSの実験では、小型の超電導変圧器に大電流を通電します。


図2 変圧器の原理

大電流通電中




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